研究概要 |
固体表面上のナノ粒子の吸着構造を制御できれば、光学的性質など様々な機能の制御が可能になるであろう。本年度はその出発点として固体基板上のナノ粒子の吸着構造を走査トンネル顕微鏡(STM)で観察した。また、クラスターの電子構造を調べるためSTS(走査トンネル分光法)測定を行った。試料として、サイズ分布をよく制御できるパラジウムクラスター[1]と、サイズが極めて小さく光学的性質が調べられている金12量体サブナノクラスター[2]を選んだ。 パラジウムクラスターは基板の種類によって分散したり集合したりする。従って、STMで安定して観察するためには、クラスターを基板表面に固定する必要がある。そこで金(111)表面上に作成した1,4-キシレンジチオールの自己組織化膜(SAM)を用いたところ、パラジウムクラスターを固定化することができた.さらにSTS測定を行ったところ、階段上のCoulomb Blockadeを示すスペクトルが得られた。 金12量体サブナノクラスターについてはグラファイト表面上で像を捉えることができた。STS測定ではクラスター離散準位に対応すると思われるスペクトルが得られそのエネルギーギャップは根岸らの吸収スペクトルの測定結果ともよく一致した。 このように、個々のクラスターの電子構造、光学的性質を調べることができた。吸着構造の制御のためには、クラスター同士の相互作用が上記性質にどのような変化をもたらすかを知る必要があり、今後の課題である。
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