研究概要 |
昨年度に引き続き、強誘電体デバイス材料であるPZT(PbZr^<1-x>Ti_xO_3)のバルク結晶の立方晶相での電子密度分布及びPb原子の挙動のZr/Ti組成依存性を調べた。昨年度は合成した試料の純度が低いことが問題となっていたが、今年度は合成法を改良し、高純度試料の合成に成功した。Ti濃度xが0,0.15,0.25,0.35,0.48,0.55,0.60,0.65,0.75,1の高純度PZT粉末試料を合成し、大型放射光施設SPring-8のビームラインBL02B2で放射光粉末回折実験を行なった。立方晶相の850KのデータをMEM/Rietveld解析した結果、次のことが分かった。Zr濃度が高いPZTでは、Pb原子が1aサイトからある方向に変位した複数のサイトにランダムに配置するようなdisorder状態にあった。Pb原子の変位の方向は組成によって異なり、PbZrO_3では<110>方向であり、Ti原子が加わると<111>方向に変化した。1対1の組成比を境にTi高濃度側では再び<110>方向へと変化し、x=1のPbTiO_3ではPbのdisorderは見られなかった。このことから、Pb原子の熱的挙動に注目すると、PZTの立方晶は同一構造ではなく、1対1の組成比付近に境界があると考えられる。また、立方晶で見られるPb原子の変位の方向と低温相の構造歪とはうまく対応しており、PZTにおけるMPB(morphotropic phase boundary)形成はPb原子の熱的挙動と密接な関係があるように思われる。 PbZrO_3のZrをHfに置換したPbHfO_3はPbZrO_3と同様に反強誘電性を示す。本年度はPZT以外にPbHfO_3の立方晶相の電子密度分布解析も行なった。その結果、PbHfO_3でもPbのdisorderが見られた。但し、変位方向が異なっておりPbHFO_3では<100>方向であった。
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