研究概要 |
本研究は,原子内包フラーレンを人為的な操作が可能な原子(基本要素)とみなし,これを周囲の環境変化によって自己組織的に配列させることが同時に機能発現となる,新たな分子素子の創造を目指した.本年度は,原子内包フラーレン群が自己組織化および構造変化するための条件を,系をモデル化して分子動力学計算を行うことによって探索した.第一段階として,原子内包フラーレンを最小のフラーレンであるC20に単純化して,これをモデル化した.C20同士の第一原理分子軌道計算によるエネルギー変化では,C20の方向の組み合わせによって明らかな違いが現れたため,方向を考慮したポテンシャルを設定した.Cu基板とC20のエネルギー変化では,方向による違いは小さかったため,方向は考慮しないこととした.作成したポテンシャルを用いて,Cu基板上のC20の挙動を,C20の回転を考慮する分子動力学計算を行い,原子間ポテンシャルおよび回転の考慮と系の挙動の関係を調べた.この結果,フラーレンの異方性を考慮する場合としない場合とでは,C20の配列に違いが現れることがわかった.一方,ナノ構造素子としては,基板のバリエーションによってパターン形成と動的な構造変化が起こる可能性を明らかにすることも重要である.このため,MgO基板上の金属原子の挙動を,基板と金属原子間のポテンシャルを設定し,分子動力学計算を行った.第一原理バンド計算を用いて系のエネルギー変化を算出し,ポテンシャルを構築する方法を確立した.このモデル計算の結果,得られた挙動は,酸化物基板による表面原子のパターン形成の可能性を示していた.
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