研究概要 |
平成16年度は、研究計画期間における最終年度にあたり、申請時に記載した研究計画に基づき国、医療関係者、患者それぞれの立場から見た医療に対するリスクの定義を明確化する予定であった。これらのリスク同定は,あまりにも広範囲にわたり,標準的な社会認識を背景とした定義は非常に困難であることがわかった。医療に対するリスク評価問題に関しては、2つのアプローチが考えられる,ひとつは,多くの機関で実施されている,診療事例研究による診療プロセスの妥当性評価があげられる。ふたつめは,過去の実績,経験から,今後行なう治療が患者に対しどのような身体的影響を与えるのか。また,患者がどのようにその治療を納得して受療しているかを評価する手法があげられる。 現在、上記リスク評価に関する研究として、後者の立場の研究が平成16年度の主な研究内容となった。信頼性工学を利用し、不確実性を考慮した医療信頼性評価に関するモデル構築が目的である。ひとつは,QOL(生活の質)が、臨床判断に与える影響について、臨床判断決定の閾値分析を例に定式化を行なっている。患者の精神的,身体的健康評価を考慮するため,効用値の算定に比例ハザードモデルを採用し,年齢変化に対し,閾値の変化の様子をも確認できるモデルとなった。ふたつめは,遺伝子治療を放射線治療に応用したGenetic Radiotherapyに対するTCPを導出し,従来の放射線治療との比較を目的とした評価モデルを提案した。本研究に対しても,医療リスクという観点から,遺伝子治療に対するリスク定義を評価規範であるTCPに反映させる予定であったが,その段階までは至らなかった.今後,治療リスク概念の評価規範への反映手法の確立を予定している。
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