研究概要 |
道路ネットワークは人の移動や物資の搬送を支える重要な社会基盤システムである.特に,大規模な地震災害が発生した場合には,救急,消防等の緊急初動や被災地への支援活動等の大きな機能を担うこととなる.発災後,これらが適切に機能しない場合には社会活動や経済活動が被る損失は甚大となるため,道路ネットワークの地震時における機能損失に関する評価は極めて重要である.以上の背景を踏まえ,本研究の目的としては,地震による道路ネットワークの構造被害と道路ネットワークの地震時における機能性の関連をモデル化し,地震時の機能性を反映させた耐震性能規定を提案することである. 平成15年度および平成16年度の研究を通じて,地震災害リスクに対する道路ネットワークの機能損失と構造被害との関係を「地震被害帰着構成表」および「損失マトリックス」としてモデル化した上で,数理的な定式化を行い,全体モデルのプロトタイプを構築した.これらを踏まえ,平成17年度には,過去の地震災害の事例よりモデルの検証に必要となる実証データを収集し,これらに基づいてモデルの修正と一般化を図った.地震災害の具体的な事例としては,1995年兵庫県南部地震の事例と,道路ネットワークの地震災害時における機能不全が大きな社会問題となった2004年新潟県中越地震の事例を取り挙げた.さらに,本提案モデルを道路ネットワークの地震リスクマネジメントの枠組みの中で適用することを想定し,それらの方法論を構築した.その上で,新潟県中越地震を考慮し,新潟市内の河川を横断する典型的な河川内道路構造物を対象としてケーススタディーを実施し,これらのケーススタディーを通じて地震時における道路ネットワークの機能性を反映させた耐震性能規定を提案した.
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