| 研究概要 |
枯草菌スポアは休眠状態の細胞で熱や化学薬品などに対して耐性を示す.外部環境の変化に伴い増殖に有利な状態になるとスポアは発芽して,再び栄養増殖を行うようになる.枯草菌スポア形成期特異的なプロテアーゼYabGが枯草菌スポア内に存在する.YabGの他にも,枯草菌スポア内にはいくつかの既知のプロテアーゼが存在することがわかった(Kuwana et al., 2002).
枯草菌スポアタンパク質の多くは,枯草菌スポア形成期において特異的に発現する.枯草菌スポア内にあるプロテアーゼもスポア形成期に発現すると考えられる.枯草菌ゲノムにコードされる約4千遺伝子のうち半数は機能未知であり,それらのなかにスポア形成に関与するものが含まれている可能性がある.そのため,枯草菌スポア形成期に発現する遺伝子について様々な手法を用いて解析を行った.その結果,枯草菌スポアコート形成やスポアの抵抗性に必須であるspoVIF,ylbO遺伝子を新たに発見した(Kuwana et al., 2003 ; Kuwana et al., 2005).本年度の研究では,ylbO遺伝子変異株においてスポア形成に特異的な遺伝子とタンパク質の発現を解析した.ylbO遺伝子変異スポアは透過型電子顕微鏡観察により,スポア外層に存在すべきコートのほとんどが失われていた.ウエスタンブロッティング及び,ノーザンハイブリダイゼーションの結果から,YlbOタンパク質はスポア形成期後期に発現するコートタンパク質の転写発現に関与することを明らかにした.枯草菌スポアに存在するプロテアーゼのいくつかはスポア形成後期に発現するコートタンパク質でもある.これまでに機能解析してきたSpoVIF,YlbOタンパク質が枯草菌スポアに含まれるタンパク質に多大な影響を与えることを明らかにした.
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