研究概要 |
昨年度中に、Mg^<2+>を添加することによりMg^<2+>結合型イクオリンについて非会合状態で良質のNMRスペクトルが長時間測定可能な条件を見いだした。NMR解析のために、^<15>Nおよび^<13>C均一標識イクオリンを調製する条件(培地、プラスミド、培養条件等)を検討し、400mLの培地から数mgの標識イクオリンを得られるまでに最適化した。その後、発現・精製した^<15>N,^<13>C均一標識イクオリンについて各種多次元NMR (^<15>N HSQC, ^<13>CHSQC, HNCA, HNCOCA, CCONH, HNCACB, CBCACONH, HNCO, HNCACO,および^<15>N NOESY-HSQC)を測定し、主鎖の各プロトンの化学シフトを帰属した。しかし、ループ部分あるいはその付近と予想されるアミノ酸残基のいくつかの帰属等に不正確さが残った。そこで、アミノ酸選択的標識イクオリンを調製した。具体的には、^<15>N標識したメチオニンを培地に加え、培養条件を検討し、^<15>N-メチオニン標識イクオリンを調製した。(イクオリンには5個のメチオニンが存在する。)この標識体を用いてNMR測定することにより、Mg^<2+>結合型イクオリンの主鎖帰属をほぼ完全に行うことができた。また、Mg^<2+>イオンの濃度を変化させたNMR測定、いわゆるNMR滴定実験を行った。これらのNMR測定結果から、イクオリンに3箇所存在するEFハンドへのMg^<2+>の親和性の違いを定量的に見積もること等ができた。本研究から、Mg^<2+>によるイクオリン安定化の機構、Ca^<2+>添加によるイクオリンの構造変化過程についての予測が可能になり、発光機構解明への重要な基礎データを提供できた。
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