研究課題
若手研究(B)
本研究は、学習者の負担を最小限にとどめることのできる、適切かつ効率的な敬語教育の方法を確立するための一連の研究の一環として、日本語学習者数の多い韓国語母語話者を対象に、敬語の知識と運用の関係を解明することを目的とした。まず、日本語能力テストを作成し、韓国語系日本語学習者に対して実施した。そのうち、得点の上位者24名に対して、尊敬語と謙譲語の知識と運用に関する敬語実験を実施した。データを分析したところ、文法的に正しい表現を用いているかどうかを基準としてみた場合には、文字言語としての「書く」という行為も、音声言語としての「話す」という行為も、言語知識を基にした言語の産出(production)であるという点で同質のものであると考えられる結果が得られた。また、ペーパーテストで高得点をとる学習者が会話が上手であるとは限らないのは、会話場面で用いる表現のバリエーションの少なさから来る印象である可能性が示唆された。したがって、第二言語学習者の会話の上手・下手を決める要素の一つは、表現のバリエーションの数であると考えられる。さらに、本研究で分析の対象としたような使用頻度の高い敬語について言えば、日本語文法能力があまり高くない段階では話すよりも書くほうが得意で、日本語文法能力が高くなると書くことよりもむしろ話すことのほうが簡単な場合があることも明らかになった。パス解析による分析では、文字言語を媒介として、教室内で学習した文法知識と教室外での実際の会話場面とが双方向で因果関係を持っている可能性があることがわかった。このことから、日本語教育の現場においては、文法とコミュニカティブな訓練のどちらにも偏ることなく、指導してゆく必要があると思われる。
すべて 2005 2004 その他
すべて 雑誌論文 (4件) 文献書誌 (4件)
日本語研究(韓国日本語学会) 12(印刷中)
Journal of Psycholinguistic Research 34(3)
ページ: 273-324
120000880327
広島経済大学研究論集 27(4)
ページ: 15-23
120005378265
広島経済大学研究論集 27(2)
ページ: 35-46
120000881307