研究課題/領域番号 |
15730015
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研究種目 |
若手研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
公法学
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
奥谷 健 島根大学, 法文学部, 助教授 (70335545)
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研究期間 (年度) |
2003 – 2004
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研究課題ステータス |
完了 (2004年度)
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配分額 *注記 |
1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
2004年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2003年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
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キーワード | 所得税 / 所得概念 / 基礎控除 / 人的控除 / 所得控除 / 応能負担原則 / 担税力 / 課税最低限 |
研究概要 |
本研究の成果として公表および学会報告した、「所得税における基礎控除と担税力」(税法学551号、第94回日本税法学会大会)では次のようなことを指摘した。 現在の所得税法は、応能負担原則に基づき、納税者の生存権を保障している。その具体的な現れが基礎控除である。この基礎控除は納税者の最低限度の生活を保障するためのものであり、それには担税力がないと考えられ課税されていない。そこで、この基礎控除をどの程度保障すれば納税者の最低限度の生活が保障されるのかということが問題となる。また担税力という観点から、基礎控除を税額確定のどの段階で考慮すべきかという点も問題となる。 そこでこれらの問題について、ドイツの議論を参考に、応能負担原則の観点から検討を加え、納税者の個人的事情を課税段階で考慮するための原則、主観的純額主義がドイツにおいては採用されていることを明らかにした。これによれば、所得税法においては、納税者に最低限の生活費が保障されることになる。そして、この主観的純額主義は日本法においても妥当するものであると思われる。 またこの主観的純額主義は所得税における担税力の指標である所得概念と密接な関係を有する。とりわけ、本研究の対象である市場所得概念は、この主観的純額主義を明確に採用している。さらに最低生活費に加え、生業を維持するための費用も保障されなければならないという考え方を採用し、従来よりも手厚く生存権を保障しているのである。つまり、市場所得概念は納税者の権利を保護するものである。 以上のことから、市場所得概念が日本において担税力に基づき課税対象をとらえた所得概念のあり方について重要な示唆を与えるものであると考えられる。 また、この主観的純額主義が、納税義務者がその家族を扶養する場合に、納税義務者の所得算定においてどのように妥当するのか、という点について現在検討を進めている。
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