研究課題/領域番号 |
15730052
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研究種目 |
若手研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
民事法学
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研究機関 | 大阪市立大学 (2004) 東京都立大学 (2003) |
研究代表者 |
杉本 好央 大阪市立大学, 大学院・法学研究科, 助教授 (80347260)
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研究期間 (年度) |
2003 – 2004
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研究課題ステータス |
完了 (2004年度)
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配分額 *注記 |
2,900千円 (直接経費: 2,900千円)
2004年度: 1,600千円 (直接経費: 1,600千円)
2003年度: 1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
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キーワード | 解除 / フランス民法 / 訴権 / 契約の拘束力 / 帰責事由 / 註釈学派 / ローマ法 / カノン法 / パリ慣習法 / ドマ / ポチエ / ブルジョン |
研究概要 |
フランス法定解除制度の基本構造を把握するには、複数の起源を構成要素として組み合わせる論理の解明を要する、との前年度の研究で得た認識に基づき、本年度は、多様な構成要素を実際に組み合わせていくフランス民法1184条の起草過程の検討から研究を開始した。 起草過程では、フランス法定解除制度の特徴である訴権構成(解除は裁判所に請求されねばならない)を採用する理由として、裁判官が債務者に追履行の期間を与えるためである、と述べられる。その背後には、契約の拘束力という原理との関係が意識され、契約の現実の履行を原則的手段とするゆえに、それとは反対の帰結に至る契約解除の場合には裁判官による判断を要する、との思考が存在する。 解除制度を契約の拘束力との関係において理解するこの論理は、起草過程に限定されるものではない。一例を挙げれば、19世紀以降、解除の要件である不履行には債務者の帰責事由を要しないとの見解が註釈学派において支配的となり、この見解によれば契約の解除が容易となることで契約の拘束力という原理を直接的に表現する現実履行の原則性を緩める結果となるが、それでもなお、解除を認める際には契約の拘束力の原理を基礎とする裁判官の判断を要するという思考形式の中に、その論理が見出される。 以上のように、本研究では、フランス法定解除制度の基本構造とは契約の拘束力という原理との関連で捉えられた訴権構成である、との知見を得た。この知見に基づくとき、フランス法定解除制度は、契約の拘束力との連関がヨリ密接である点で、商法的論理ないし経済的合理性を明確な基軸として形成されたドイツ法定解除制度と対蹠的な位置にあると言える。そして、この認識を基礎に、近時のヨーロッパ契約法制における解除制度の展開を相対化して把握し、最終的には我が国の法定解除制度が孕む法解釈学上の諸問題を解明すること、以上が今後の課題である。
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