研究概要 |
今年度は協力ゲームの理論の応用分野の1つである「ネットワーク形成のモデル」についての研究を行った。具体的にはJackson and Wolinsky(J Econ Theory,1996)の「コネクションモデル」と「共著者モデル」およびGale and Shapley(Amer Math Manthly,1962)の「マッチングモデル」について以下のような結果を得た。 1.プレイヤーが4人または5人の場合のコネクションモデルにおいては、安定的なネットワークの集合と確率的安定なネットワークの集合は一致することを示した。 2.プレイヤーが5人の場合のコネクションモデルにおいては、3つある安定的なネットワークのうち2つだけがパレート最適なのだが、各期ごとに2人のプレイヤーがランダムに選ばれて新たにリンクを結んだり既にあるリンクを切ったりするダイナミック・プロセスのシミュレーションを行うことによって、長期的にはパレート最適でないネットワークがもっとも実現する可能性が高いということを示した。 3.プレイヤーが4人の場合の共著者モデルにおいては、パラメターの値によっては、安定的ではあるが確率的安定ではないネットワークが存在することを示した。 4.3人対3人のマッチングモデルでMen-optimalなマッチングとWomen-optimalなマッチングともう1つのマッチングが安定的となるようなケースについて、上記と同様のダイナミックプロセスのシミュレーションを行ったところ、長期的に実現する確率がもっとも大きいのは3つめのマッチングであるという結果を得た。 今年度の研究成果の一部は内田誠吾(技官)・飯村允基(大学院生)の両氏との共著の論文「ネットワーク形成のモデルにおける効率性と安定性(1)-プレイヤーが4人の場合のコネクションモデル-」として2006年3月発行予定の紀要『経済論集』に掲載予定。
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