研究概要 |
労働市場のミスマッチを考慮した不均衡計量経済モデルを提案する際に有用と考えられる、多変量線形ARMAモデルの攪乱項部分の扱い方に関する成果を中心に、学会報告と論文発表という形で発表した。さらに発表の中で扱った変数変換については、通常使用されるBox-Cox変換を修正した形の新たな変換を提案するに至った。以上の成果は一般的な時系列モデルにおける成果であるが、労働市場の時系列分析にも通じるものであると考えられる。成果の具体的内容であるが、Box, G.E.P and Cox, D.R.(1964)が提案したBox-Cox変換の問題点として、変換後の変数の取りうる範囲についての制約の存在があるが、この制約を取り払う形の変換を「修正Box-Cox変換」として提案した。次に変換後の系列が定常であるという仮定の下で、「修正Box-Cox変換」を多変量線形ARMAモデルの変数に適用し、モデルのMA部分の正規性をできるだけ保持させる形でのモデルの推定アルゴリズムを提案した。さらにその漸近特性を導出したものの、その分布は非常に複雑な形をするものであることが明らかとなったので、係数のモンテカルロ法によるワルド検定を提案した。以上の内容については、日本統計学会2004年度第72回大会で"Modifying the Box-Cox transformation in a stationary time series set-up"(with Y.Hosoya),として発表した。また報告内容は2004年度統計関連学会連合大会講演報告集に査収されている。またオリジナルなBox-Cox変換を多変量線形時系列モデルに適用した成果として、T.Terasaka(2005)"The Box-Cox transformation in the multivariate ARMA model", Annual Report of the Economic Society, Tohoku Universityに論文として発表した。
|