研究概要 |
本年度の主要研究実績は、潜在変数モデルの推定においてSimulated Minimum Hellinger Distance(SMHD)法が「同程度の適用範囲を持つGMM法の推計精度を大きく凌駕」し、かつ、「適用範囲がSMHD法よりも狭いMCMC法に迫るレベルの精度を保持する」という事実を数値的に示したことである。これに加え、グリッドコンピュータを利用した、将来の高速計算のための環境整備が進展した。本年度の研究実績の詳細は以下のようにまとめられる。 1.SMHD法と他推計法との比較分析:広い範囲に応用可能な非尤度ベースの推計法の中で、最も推計精度が高い -他推定法との精度比較は、比較の簡便性から多くの推定法が同じ条件で精度比較を行っているstandard lognormal stochastic volatility(SV)モデルを選び、Jaquire,Polson,Rossi(1994)の条件で比較データが利用可能なpersistence levelがβ=0.9の場合について行った。非尤度ベースのGMM法・EMM法、尤度ベースのMCMC法と比較分析した結果、推計精度は高い順に、MCMC、SMHD、EMM、GMMとなった。ただし、MCMC法、SMHD法、EMM法の精度と、GMM法の精度の間には大きな差異が確認された。 -Jaquire,Polson,Rossi(2004)の裾厚でリターンとボラティリティーの間に相関があるSVモデルについての予備的な比較結果では、SMHD法はMCMC法に迫る精度を示すことが確認された。 2.SMHD推計の高速計算への環境整備の進展 -推計プログラムの並列化によるグリッドコンピュータの利用可能性が検討され、将来の高速計算のための環境整備が大幅に進んだ。
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