配分額 *注記 |
3,400千円 (直接経費: 3,400千円)
2005年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2004年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2003年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
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研究概要 |
企業組織内における意思決定と,社債市場との相互の連関を明らかにすることが本研究の目的である.最終年度である今年度は前年度の実績報告と,今年度の交付申請書の研究実施計画に基づき,社債市場の構造自体を定量的に探る研究を行った.我が国では証券業の産業組織が社債発行市場の効率性に影響することが指摘されるが,社債の発行時の価格付け,ないし利回り設定がそうした要因に影響されるかどうかを実証的に探った.結論としては次のようなものが得られた.社債券の発行時の価格は市場実勢より有意に高く設定される,すなわちオーバープライシングが行われるが,このオーバープライシングは次のような新規発行銘柄で特に見られることになった.第1に引受時の幹事証券会社数が少ない銘柄,第2に引受主幹事証券会社を経験した証券会社が少ない期間に起債された銘柄,第3にAAAからA-の間で格付けがなされている,高格付けの銘柄である.この中でも第2の結果は証券業における競争構造が価格付けに反映されていることを示唆しており,重要な結論となる.引受業務を経験している会社が少ないということは,逆に言うと特定の証券会社に社債発行の引受業務が集中していることを意味する.我が国の証券会社数はここ10年は270社前後で推移しているものの,社債市場に限定するならば,1990年代後半には,各四半期に最低1回の主幹事としての社債引受実績のある証券会社は20社前後であり,桁違いに少ない.これは実質的には引受主幹事が特定の大規模証券会社に集中しており,中小の証券会社は引受の業務を行っていないことを意味している.今後こうした現象を説明する経済理論に即するモデルを構築することも可能であると思われる.なおこの研究成果の論文は,査読付き国際学術雑誌Applied Financial Economics Letterに受理され,掲載予定となっている.
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