研究最終年にあたる本年は、昨年までの実績を取りまとめるとともに、近年注目される企業の社会的責任(CSR)の制度化における経営者の役割について、検討した。 日系企業現地法人に限らず、現代の経営者育成において要求されるのは、変化を生み出す能力である。ティシー、コッターらの見解に従えば、それはリーダーシップ能力を持った人材に他ならない。 本年は、リーダーシップに関する既存研究の文献研究を行ったが、以下のような事実を指摘することが出来る。 (1)1970年代の経路目標理論、LMX理論を端緒として、フォロワーの主観に配慮した理論構築の試みがなされるようになっている。 (2)1980年代以降は、変革型リーダーシップ、カリスマ型リーダーシップの諸研究が行われるように、なった。変革型リーダーシップはリーダーの行動を数次元に集約すること、カリスマ型理論は、組織変革をいくつかの段階に分け、それぞれの段階でとるべき行動について論じている。 (3)しかしながら、多くの研究が共通して、ビジョンを打ち出すことの重要性は指摘しているものの、「どのようなビジョンを打ち出すべきか」ということについて、議論が深まっているとは、言えない。 (4)優れたビジョンを打ち出せる経営者が育成しうるか否かは、議論が尽くされていない。ティシー、ベニスなどが、リーダーを育成する環境についていくつか検討している。また、これは、CSRの分野において、倫理をしばしば個人のパーソナリティに帰属させるのと同様の傾向である。
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