研究概要 |
H17年度の研究目的は「1.新須磨病院でのBSC全院展開」「2,成果の分析・発表」「3.アクションリサーチ手法の確立」であった。この順にしたがって以下ではH17年度の研究実績を述べる。 1.新須磨病院でのBSC全院展開 H15年に神戸市須磨区の新須磨病院整形外科へのBSC導入の後,全院展開の準備,試験運用を経て,H17年4月より,全診療科,看護部,薬剤・検査・医事・管理などの間接部門でBSCの運用を開始した。部門ごとに成果の大小の違いはあるがおおむね展開は成功し,院長よりプロジェクトの延長を依頼された。また,整形外科単独での運用では現れなかった問題(マトリクス組織という病院独特のシステム,診療科間の壁,医師とそれ以外のスタッフとの立場・知識格差,病院と大学医局の関係など)を顕在化させることができた。これらの知見は今後の医療機関への管理会計システム導入の理論化に大いに貢献すると思われる。 2.成果の分析・発表 H16年に日本原価計算研究学会で報告した,新須磨病院整形外科における19ケ月分の時系列データを用いた回帰分析の結果をさらに修正した。H17年5月に開催された,ヨーロッパ会計学会では,共同研究者の谷神戸大学教授,松尾神戸大学助教授とともに,その内容について「An Empirical Investigation of a Balanced Scorecard for Strategic Management」という報告を行った。 3.アクションリサーチ手法の確立 定性的なアプローチとして認識されてきたアクションリサーチではあるが,結果的には財務・非財務のアーカイバルデータ入手も可能になることがわかっている。客観性の担保の問題さえクリアできれば,将来有望なアプローチといえる。
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