研究概要 |
DAX, MDAX等の約120社のドイツの大企業に対してアンケート調査を実施し、内約40社から回答を得た。1998年以降、ドイツの上場企業は、コンツェルン決算書について旧商法典292a条によって自国の商法会計基準からIAS/IFRSへの移行を徐々に進めてきた。回答企業のすべてがIAS/IFRSを既に導入し、また2007年以降ドイツで上場するすべての企業へのIFRSの強制適用が商法典に盛り込まれた。しかし、個別決算書の作成には、商法典に従った作成がドイツの税法上、義務付けられていることから、今後IFRSが適用されるのはコンツェルン決算書のみとなる。回答企業のすべてIAS/IFRSに基づくコンツェルン決算書の作成を、国際的比較可能性および透明性確保の点からすべてのEU-GAAPを支持しない理由としては、特にUS-GAAPの多岐にわたる解釈可能性から生ずる困難があげれる。 しかし、IAS/IFRSへの移行に伴う費用は、莫大であったことを多くの企業が指摘し、その内訳として、決算書作成費用が半分近くを占めたほか、コンサルティング費用がそれに次いだ。移行に要する時間は、一人で行った場合、1年半近く要すると見込まれる。私的な会計基準設定団体であるDRSCが作成する会計基準については意見が分かれ、斟酌すべき多くの異なる基準が重複して存在する、基準が時々刻々変わる、特定の団体の利益を代表する、等の理由でこれに不便を感じる企業が比較的多い反面、市場指向的である、決算書作成に際して支援が得られる、作成段階で関与できる等の理由でこれを評価する企業もある。公的な会計基準審議会は、商法典上の規制から未だ設置されていない。IFRSの適用を回避するために日本企業がEU市場から撤退することは、ほとんどのドイツ企業が望んでおらず、移行にかかる労力・費用について今後、国家の支援も含めた検討が必要となろう。
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