研究課題/領域番号 |
15730266
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
社会福祉学
|
研究機関 | 愛知淑徳大学 |
研究代表者 |
永田 祐 愛知淑徳大学, 医療福祉学部福祉貢献学科, 講師 (90339599)
|
研究期間 (年度) |
2003 – 2004
|
研究課題ステータス |
完了 (2004年度)
|
配分額 *注記 |
3,100千円 (直接経費: 3,100千円)
2004年度: 1,600千円 (直接経費: 1,600千円)
2003年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
|
キーワード | ひとり親家庭 / ジェンダー / 福祉レジーム / 収斂と多様性 / 脱商品化 / 脱家族化 / 福祉国家 / 社会政策 / 就労モデル / ケア提供モデル |
研究概要 |
ひとり親家庭に対する社会政策は、単にひとり親家庭の問題への対処という意味のみならず、福祉国家がジェンダーをどのように構造化しているのかというメルクマークとして注目されるようになってきている。本研究では、こうした視点から、各国のひとり親家庭に対する社会政策を分析対象とし、福祉国家の社会政策が収斂しつつあるのか、多様性を持ったものなのかを分析した。具体的には、(1)ひとり親家庭に対する社会政策を「ひとり親家庭の貧困率」と「ひとり親家庭の就労割合」で類型化し、ひとり親家庭の女性を「母親」とみなす社会政策を採用する国(イギリスやオランダ)と「労働者」とみなす社会政策を採用する国(スウェーデンや日本)を分析対象とし、(2)それぞれの近年の政策変化を分析し、(3)ひとり親家庭に対する社会政策が収斂しつつあるのか、多様性を持つのかを検討した。結果として、以下のような知見を得た。 (1)ひとり親家庭の女性を「母親」とみなす国(イギリス・オランダ)ではこうした政策論理に変化が見られる。具体的には、こうした女性に対する就労支援を強化し、一方で就労が可能になるような環境を整えようとする動きが見られる。ただし、脱家族化(家族に依存しないでも生活していける程度)が進まなければ、就労を支援しても、ひとり親家庭の生活水準(貧困率)は改善しないことを示した。 (2)脱商品化(労働者が自らを商品化せずに生活できる程度)の高いスウェーデンのような国でひとり親の女性の商品化(就労率の高さ)の度合いが高い。スウェーデンは同時に脱家族化の程度が高く、女性一般の就労環境が整っていることで就労率の高さと貧困率の低さが両立している。 (3)日本は、就労率ではイギリスやオランダ政府が目標とするような水準を達成しているが、ひとり親家庭の生活水準は低い(国際比較可能な貧困率は算定できないが)。この要因はスウェーデンと比較すると女性一般の就労環境が整っていないことにその原因があると思われる。つまり、日本の場合、男女賃金格差が高いため、ひとり親の女性は就労していても生活水準が低いワーキングプア(working poor)として放置されている。 (4)以上のように、ひとり親家庭に就労を促すという方向では各国の社会政策は収斂しつつある。しかし、ひとり親家庭の生活水準はひとり親家庭に対する社会政策のみではなく、すべての女性に対する社会政策の結果と関連しており、その意味では各国に多様性が見られると結論できる。
|