研究概要 |
本研究の目的は,防衛的悲観主義に関する日本人への適用可能性について検討をおこなうことである。本年度は,本研究課題の最終年度として研究の総括をおこなった。 1.前年度に実施した調査研究および実験研究において得られたデータに関して,統計パッケージSPSS14.0およびAMOS5.0を用いて詳細な分析を行った。これらの研究では,防衛的悲観主義を米国で実証したNorem & Illingworth(1993)と同様の手続きによって日本人大学生を対象に実験的検討をおこない,また同時に唾液アミラーゼ活性値を測定し,DPが失敗経験後の生理的ストレス反応に与る影響についても検討をおこなった。実験参加者をクラスタ分析によってDP群およびSO群に分類し,これからおこなう課題への熟考を促すd条件および課題への熟考を妨害させることを意図したs条件のいずれかにランダムに配置した。この条件操作に引き続き,三種類の計算問題をおこなった。その結果,はじめの課題の遂行成績において有意な交互作用は認めらなかったが,各群の平均値に関しては先行研究と同様,対処方略の一致した群においてより成績が良かった。また,DP群では,SO群と比べ,失敗経験後の課題の遂行成績が悪く,また,唾液アミラーゼ活性値は低下した。DP群では失敗経験後は次の課題に対する動機づけが低下して遂行成績は悪かったものの,生理的ストレスをあまり感じていないという示唆が得られた。 2.分析の結果をまとめ,成果を報告した。具体的には,日本心理学会第70回大会,北陸心理学会第41回大会および日本パーソナリティ心理学会第15回大会においてポスターおよび口頭発表を行った。 3.本研究課題では学業達成場面に特化して研究をおこなった。本研究課題の発展として,今年度の後半では,対人場面における防衛的悲観主義尺度を作成するための予備的調査を実施した。
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