研究概要 |
研究の総括:計算論的モデル構築・実装とシミュレーションによる妥当性の検証および将来への研究の基礎データの習得 本研究課題の最終年度は、研究の総括としてリズム行動と音楽による情動喚起の関係を包括的に説明する計算論的モデルを構築した。さらに、本研究を発展させるための基礎データを取得するということを目的に、リズムが様々に異なる音楽が、実際に人間に対してどのような情動的変化をもたらすのかということについて、特に聴取環境との関係について実験的に検討した。 これまでの研究で、1)リズム知覚過程における潜在記憶の役割、2)音楽による情動の喚起の発生時点と変化時点に関する、生理的な変化と自身のメタ的認知との関係、3)視覚と聴覚によるリズム知覚の違いと生理的変化との関わり、が明らかとなってきている。本年度は、いわゆる"癒し音楽(healing music)"に焦点を絞り、それをBGMとした場合に,癒しをコンセプトとした居住空間の評価にどのような影響を与えるのかについて実験的に検討した。「癒し空間」を実際に設営して,癒し効果が高いと評価された音楽と低いと評価された音楽をBGMとして用い,音楽が空間に適しているかどうかの判断,および,空間そのものの印象評定を行った。実験の結果,癒し効果が高い音楽が,より癒し空間に適していると判断された。また,癒し効果が高い音楽がBGMの場合は,空間をより「癒される」と感じることがわかった。実験の結果を踏まえて,癒し空間のデザインにBGMとしての音楽をどのように活用していくべきかを議論した。
|