研究概要 |
1.PHA(後催眠健忘)暗示の潜在記憶への影響について検討することを目的として,催眠感受性検査中に提示された単語についてPHA暗示を与え,PHA解放前およびPHA解放後に単語完成課題をおこなわせた。 PHA解放前のターゲット単語の単語完成率を比較すると,催眠感受性高群と低群との間で差は認められず,PHA暗示解放後のターゲット単語の単語完成率を比較しても,高群と低群との間に差は認められなかった。つまり,PHA暗示は,潜在記憶課題に影響しなかったと考えられる。この結果は,先行研究を支持する結果である。 ただし,本実験の単語完成率をみると完成率は非常に低く,先行研究の未学習時の完成率と同レベルである。このことから,今回の実験結果は実験手続き上の問題によるプライミング効果の消失であるという解釈の可能性を否定できない。 2.被暗示性の測度として状況的な欲求圧力による記憶の変容から被暗示性を測定することができるGSSを用い,被暗示性と催眠感受性との関連を検討することを目的とした。集団式催眠感受性検査(GTHS)とGSSの各得点の記述統計量および両者の相関関数を算出したところ,shiftのタイプII項目においてのみ催眠感受性との間に弱い正の相関が認められ,タイプIIの質問において反応が変遷する人ほど催眠感受性が高いという関連がみられた。しかしながら,GSSの他の得点は催眠感受性との関連は認められなかったことを鑑みれば,総じてGSSにおける被暗示性と催眠感受性は関連しないということが示されているという結論が得られた。 3.基本的には記憶に依存している態度や性格について,催眠との関連を検討するためのツールを開発した。催眠が潜在記憶を外部から制御する手続であるととらえた場合,潜在的態度の変化を催眠の使用によりコントロールすることが可能と考えられる。このことから,Web版潜在連合システムにより,今後,催眠と催眠に対する潜在的態度との関連を検討することが可能となった。
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