研究課題
若手研究(B)
概均質ベクトル空間の中で、相対不変式が2元3次形式の判別式と関連する空間の系列について、格子の取換えにより導かれる新たなゼータ関数について、谷口隆氏(東京大学大学院数理科学研究科)と若槻聡氏(京都大学大学院理学研究科)と共同で研究を行った。この結果、2元3次形式のベクトル空間について、既知の格子とは異なる8通りのZ格子が存在し、そのうちの4通りについて定義されるゼータ関数(計8つ)について、従来の関数等式とは異なる新たな関数等式が存在することを示すことができた。これは、1990年代後半に発表されている研究代表者(大野)による2元3次形式のゼータ関数についての予想と中川仁氏(上越教育大学教育学部)によるその予想の証明とも思想を同じうする成果である。残る4つのZ格子に対しても類似の成果を目指して研究を遂行中である。例外群に付随する級数としてG2に付随するアイゼンシュタイン級数を考察し、とりわけその極大放物型部分群について調べる研究も現在遂行中である。多重ゼータ値については、青木貴史氏(近畿大学理工学部)との共同研究の成果のひとつがPubl.RIMSに掲載されたほか、研究代表者の単著論文がDev.Math.に掲載された。青木氏との共同研究は、今年度に入って昆布康博氏(近畿大学大学院総合理工学研究科)を加えて更に進展し第2弾となる論文を執筆し、現在投稿中である。また奥田順一氏(早稲田大学)との共同研究を実施し、等号付き多重ゼータ値のqアナログについて関係式を証明することに成功した。この結果をまとめた論文も現在投稿中であり、この共同研究成果については岡山大学で開催された日本数学会秋季総合分科会代数分科会において口頭発表を行った。また、若林徳子氏(近畿大学大学院総合理工学研究科)との共同研究成果のひとつ、等号付き多重ゼータ値の巡回和公式についての論文は、ポーランドの数学誌Acta Arithmeticaに掲載決定された(2006年1月付け)。また、特定の等号付き多重ゼータ値について、母関数を用いた値算出の研究を、研究代表者の単独研究として行い、大きく分けて2つの特殊系列について成果を得た。この成果については、2005年10月の京都大学数理解析研究所における解析数論シンポジウムと、2006年1月の東北大学における数論と組合せ論の小研究集会において話題の一部として口頭発表した。この成果についての論文は現在執筆中である。また、Ore型の調和数および完全数について円分体の理論を用いた研究を後藤丈志氏(東京理科大学理工学部)と遂行し,調和数・完全数各々について研究成果を得た。この成果は2006年3月開催の応用数理学会JANT部会(早稲田大学における)と日本数学会年会の代数分科会(中央大学における)で口頭発表、これらの研究は3本の論文にまとめられいずれも現在投稿中である。本年度に雑誌掲載された論文が2本、掲載決定を受けた論文が1本、投稿中の論文が6本である。
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Dev.in Math. 14
ページ: 131-144
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Zeta Functions, Topology, and Quantum Physics 1(To appear)
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