研究概要 |
非線形非平衡系におけるパターン形成問題に関連して,空間的に一様な場におけるパルスとその運動に関しては多くの研究があり,既によく知られている。しかしながら,空間的な非一様性や時空間的な非一様性が系に含まれている場合のパルスの運動やパターン形成に関しては特殊な場合を除いてほとんどわかっていない。本研究では,3年間に渡って空間的な非一様性が,パターン形成やパルスのダイナミクスにどのような影響を与えるかを調べた。散逸系におけるパルス波等は非線形現象の代表であるが,それらは空間的な非一様性に対して非自明なレスポンスを示すことが明らかとなり,今後のさらなる研究の広がりを期待させるものである。 本年度は空間非一様性がパターン形成に与える影響に関して,特に散逸構造が保たれる為のエネルギー供給源が,空間的に局在化しており,それが時間とともに移動する場合のパターン形成問題として,ある種の沈澱現象との関わりを見た。エネルギー供給源から供給される物質は拡散とのバランスからパルス状の形状をとり,それがある速度で移動する。ある沈澱パターンに関する実験においては,その速度が時間とともに変化するが,それによってパターンの複雑性が生まれている可能性が示唆された。そのモデリングおよび数値計算の結果から非平衡状態が空間の一部に局在かしたパターン形成は,コントロールされたパターン形成に関しては大変重要であり,その局在化部分の形状および移動速度がパターン形成に決定的な影響を与える。これらの成果は今後の継続的な研究を通じて多くの未開の分野を切り開く可能性があると考えている。
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