研究概要 |
前年度までに得られた成果をもとに高Rayleigh数に対する非線形偏微分問題である2次元Oberbeck-Boussinesq方程式の定常解の存在検証を行なった.方程式は流体の粘性を規定するパラメータであるRayleigh数が大きくなるほど非線形項が支配的となり,計算が不安定になることが知られている.この問題点を回避するため,問題を残差引き戻しの形式に変換し,解の存在検証条件を導き,数値実験を行なった.併せて3次元問題への拡張を試み,原理的な適用可能性を確認した. さらに,これらの成果を踏まえ,2次元問題に対する対称性破壊分岐点の存在検証を行った.Oberbeck-Boussinesq方程式は,Rayleigh数をパラメータとして様々な分岐を起こすことが数値的に知られている.ただし理論的に得られている知見は自明解からの分岐のみであり,非自明解からの分岐点の存在証明は得られていなかった.本研究では,分岐点における特異性を回避するためにOberbeck-Boussinesq方程式と線形化方程式によって構成される拡大方程式を与え,分岐点が存在するための条件を対称性破壊分岐理論を援用することにより導いた.さらに,拡大方程式の解の存在検証条件の定式化を行ない,検証アルゴリズムおよび検証結果を与えた.加えて,分岐曲線追跡のための数値計算スキームとともに大規模数値計算に適応したアルゴリズムの高速化・並列化を検討した.以上の研究成果によって,流体力学的非線形安定性問題,特に熱対流問題の解の大域的構造を把握するための基盤を構築することができた.
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