研究課題
若手研究(B)
私はOregon大学のHuaxin Lin教授との共同研究によって、カントール集合と円周との直積空間における極小力学系と作用素環との関連について成果をあげた。Lin教授との共同研究は平成15年10月から始まっており、既にカントール集合上の極小力学系については期待通りの結果を得ていた。本年度はその研究を継続し、カントール集合と円周との直積空間という1次元空間に考察の対象を広げた。我々の興味は、力学系から生じる作用素環の同型類と、力学系の間の近似的共役という概念の相互作用にある。2つの力学系が互いに共役であれば、当然そこから生じる作用素環は同型となる。しかし作用素環が同型であっても一般には力学系が共役になるとは限らない。そこで私達は(極小)力学系に対して近似的共役という新しい概念を導入し、これまでに無かった視点から独自の研究を進めてきた。カントール集合と円周との直積空間における極小力学系に関して私達が得た結果は主に次の通りである。まず、そこから生じる作用素環が安定階数1と実階数0を持ち、さらにBlackadarが導入した射影の比較に関するある性質を持つ事が示された。また特別な場合にはこの作用素環のtracial rankが高々1以下である事も示された。何らかの対象から生じる作用素環がtracial rank zeroを持つ事はこれまでにもしばしば証明されてきたが、tracial rank oneという結論が得られた自然な例はこれが初めてでは無いかと思われる。さらに私達は前述のように力学系の近似的共役という概念を導入し、その同値関係が作用素環の同型と密接に関わり合っている事を示した。平成16年11月にバンフ国際研究所(カナダ)で行われた研究集会において、私とLin教授はこれら一連の成果について発表を行い、好評を博した。
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Mathematische Annalen (未定)
Publications of Research Institute for Mathematical Sciences (未定)
110001714248
Communications in Mathematical Physics (未定)