研究概要 |
特異ポテンシャルにおけるハミルトン系に対する変分的アプローチとしては,エネルギー保存量Hを与えて周期軌道の存在を示すprescribed energy problemと周期Tを与えて周期軌道の存在を示すprescribed period problemの2つに大別される。どちらの問題も対応する汎関数の臨界点として周期軌道を得ることができるが、特異ポテンシャルゆえのPalais-Smale条件の破れや汎関数レベルが0の臨界点(定数解)と物理的に意味のある非定数周期解との区別など,克服すべき難点は類似している。また,汎関数に変分的理論を適応させて問題を議論する際に周期Tと周期nTの軌道が異なる汎関数レベルの臨界点として得られてしまうので,この点が周期軌道の多重性を示すことを格段に難しくしている。 本年度はprescribed energy problemに関しては原点を中心とした星形領域の特異点集合をもつポテンシャルに対して,非定数周期解が存在しないエネルギー保存量の十分条件を得た。prescribed period problemでは特異点集合が1点のみの場合ではなく一般のコンパクト集合をなす場合について任意の周期T>0に対して周期軌道の存在を示し論文にまとめた。特異点集合の測度を0に近づけたときの周期軌道の漸近挙動については部分的に解明したこともあるが,全体像はまだつかめず今後の継続課題としたい。また,周期軌道の多重性やハミルトン系での変分的手法の他の非線形問題への応用なども今後研究していきたい。
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