研究概要 |
本研究は、山形大学が独自に開発を進めてきた新しい概念の優れた位置分解能を有するX線検出器であるキャピラリープレートガス比例計数管(CGPC)を用いて、広いエネルギー領域に高い感度をもつ飛翔体搭載用撮像型宇宙X線偏光度検出器の実用化に向けた開発を目的に研究を行った。キャピラリープレートは,極めて細いガラス管(100μm)の束であり,X線の入射位置を数10μmという優れた位置分解能で検出することを可能にするガス放射線位置検出器のための新しい素材である。偏光X線が,ガス中で光電吸収されるとき光電子の射出方向に指向性があり、この電子のガス中での電離による飛跡の測定によりX線の偏光度が検出できる。 そこで我々は、キャピラリープレートガス比例計数管の偏光度検出能力の詳細な性能評価試験を国内の放射光施設であるSPring-8およびフォトンファクトリー(PF)において行った。評価実験を行った-ムラインはSPring-8がBL38B1でPFはBL14Aである。天体観測用X線偏光計において、X線のエネルギーに対する偏光度検出能力を調べる事は重要な性能評価パラメータである。そのためには、まず各施設のX線ビームの偏光度を精度良く調べておく必要がある。我々はコンプトン・トムソン散乱の原理を利用した簡易型X線偏光計を開発し、各放射光施設のX線のエネルギーに対する偏光度測定をCPガス検出器の性能評価実験に先だって行った。その結果、SPring-8(BL38B1)とPF(BL14A)の偏光X線ビームに対する偏光度はそれぞれ99%と82%であり、各放射光施設とも本開発試験において十分な性能を有していることがわかった。続いて、このX線ビームをキャピラリープレートガス比例計数管に入射させ偏光度検出能力の評価試験を行った。その結果、15keV偏光X線に対して得られた光電子飛跡の方向分布はX線の偏光方向に大きく依存しており、モジュレーション因子約25%の偏光解析能力を持つことを示した。
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