研究課題
若手研究(B)
原子核を記述する基本的な模型であるシェル(殻)構造とクラスター構造の2つの競合する例として^<12>C核を取り上げ、αクラスター構造の出現と消滅を微視的な立場から分析した。^<12>Cは、3αの模型空間を仮定して多くの理論計算がなされてきたが、シェル模型的見地からは、陽子・中性子ともにp3/2軌道の閉殻であり、スピン・軌道相互作用が最も顕著に作用すると考えられる。そこでこの核に対して、3α模型とαの崩れを取り入れたシェル模型的配位の両方を用いて分析し、特に基底状態ではαの崩れが大きいことを示した。これは電磁遷移確率にも影響し、星の内部での元素合成に関わる。また、この問題は、微視的なαクラスター模型を用いて^<12>C(3α系)と^<16>O(4α系)の結合エネルギーが同時に再現できないという長年の問題に対しても示唆を与えており、^<12>Cの"過小結合問題"の半分は解決することがわかった。また、このようなαクラスターの崩れの度合いを軽い核に対してシステマティックに計算し、核図表の上に数値として書き込む試みを行った(研究発表の雑誌論文1)。次に行ったことは、計算で用いる核子間相互作用を改善し、現実的な核力のもつ性質をより良く反映させていく試みである。原子核においては、核内における有効相互作用が常に大きな課題である。これまでごく軽い原子核を除いては中心力やスピン・軌道力の中に繰り込まれていた核力のテンソル部分(テンソル力)をあらわに取り扱った場合、計算される核構造がどのように変化するかは重要な問題である。このような立場から、核力の本来持っている性質がいかにして原子核構造の中に反映されているかを根源的に見直し、クラスター構造やシェル構造などといった原子核の持つ性質がどのように核力のもとの性質と結びついているのかを見直す試みを開始した。例としてHeやBe同位体の構造計算を行った(投稿論文準備中)。
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Physical Review C70
ページ: 54307-54307
European Physical Journal A22・3
ページ: 461-461