研究概要 |
(1)「SDSS DR4の銀河分布を再現する統計理論」 概要:本年度は研究の完成段階として、Volume Limitedサンプルを15種類作って解析を繰り返し、統計的誤差を求めた。 詳細:銀河の分布には、宇宙の大規模構造を形成した重力の普遍酌な性質が反映されているため、(A)系が加法的か (B)分布関数が長くテイルを引くか? の2つの性質に着目して4種類の統計力学(ボルツマン、空間的フラクタル、Renyi、Tsallis)を選び、銀河分布を再現する統計力学が持つ性質を調べた。Sloan Digital Sky Survey Data Release 4の分光された銀河の観測データについて、5つのVolume Limitedサンプルを作り、4種類の統計力学を適用し、エラー・バーをつけ、赤池情報量規準(AIC)が最小となるベスト・フィットの理論を求めたところ、全てのサンプルにおいて、確率分布関数が長いテイルを引くTsallis統計とRenyi統計が最も良く観測データを再現した。一方、各サンプルを赤方偏移の異なる3つずつのサンプルに分けて統計を調べたところ、赤方偏移依存性は見られなかった。Deep Surveyといっても15サンプルは比較的近いためだと考えられる。現在、論文をまとめて投稿準備中である。 (2)「ダーク・エネルギー・モデルの宇宙論的N体シミュレーションを表す統計理論と赤方偏移依存性」 概要:5種類のダーク・エネルギー・モデルに対して、大規模構造の時間発展の違いを調べた。本年度は研究の完成段階として、50種類の初期値に対するシミュレーションの解析を繰り返して統計誤差も求めた。 詳細:初期条件はCOSMICSで作成し、時間発展の近距離力は直接計算し、遠距離力は空間メッシュでまとめて計算している。Tsallis統計は全ての時刻(赤方偏移z=12〜0)の構造を良く再現する一方、ボルツマン統計は初期では合っているが、構造が形成されてくると合わなくなり、代わりにRenyi統計が合ってくることを明らかにした。ダーク・エネルギー・モデルp=wρについて、w=-0.5,-0.8,-0.9,-1.0,-1.2の場合のシミュレーションをそれぞれ行ったが、wの値による有為な差は見えない。現在、論文をまとめて投稿準備中である。 (3)「自発的対称性の破れによる量子測定理論」 概要:場の理論における自発的対称性の破れの考えを用いて量子測定過程を統計理論で扱うフォーマリズムを提案し、混合状態から純粋状態へ時間発展するモデルを作った。結果は査読付論文として公表された。
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