研究概要 |
強磁性金属転移を250K、電荷-軌道整列転移を158Kで起こす(Nd_<1-x>Sr_x)MnO_3(x=0.50)の光散乱及び赤外反射測定より、軌道-電荷整列相転移に伴うフォノン系、電子系の変化を観測した。光散乱スペクトルには、電荷-軌道整列相では超周期構造の形成に伴う、折返しフォノンモードによるピークが観測された。このピークは温度、組成変化、磁場で電荷-軌道整列状態を壊すと観測されなくなり、電荷-軌道整列相の証拠である事が明らかになった。赤外反射測定からは強磁性金属相でDrude-likeな反射率、電荷-軌道整列相では折返しフォノンモードが観測される事が明らかになった。 強誘電性と反強磁性の共存したRMnO_3(R=Gd,Tb)の光散乱スペクトルの温度、磁場依存性を行った。これらの物質では強誘電相に特有なソフトフォノンモードや、超周期構造に伴った折返しフォノンモードを持たず、通常の強誘電性を持った物質と大きく違う事が明らかになった。最近では、この系で強磁性相が起こるのは逆Dzaloshinsky-Moriya相互作用と呼ばれる、スピン系のエネルギーを低下させるためにO^<2->イオンが僅かに動く現象であると提唱されている。このモデルによれば反強磁性秩序が強誘電性の原因になること、非常に小さな格子変位で強誘電性を生じさせることが説明される。本研究の結果はこのモデルを支持するものであった。 又、強誘電性を示さないRMnO_3(R=La,Pr)の光散乱スペクトルと比較を行ない、Tilt modeのエネルギーがMn-0-Mnボンド角に比例する事、強誘電性を持つR=Gd,Tbの場合にはJahn-Teller modeのピークの半値幅が小さくなる事を明らかにした。
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