研究概要 |
Lax対とは,現在までに知られている多くの可積分方程式に付随している線形の微分演算子の対である。スカラー型と行列型とが存在しており,私が提唱しているスカラー型ラックス対の可積分高次元化法(Lax-pair Generating Technique)の有効性を検証することが本研究課題の主目的である。今年度は本採択課題の最終年度であり,これまで3年間において研究の集大成として以下の2テーマについて研究を進めた: 1.平成15,16年度においてLax-pair Generating Techniqueを用いて,Burgers, KdV, KP方程式などのスカラー場の可積分方程式を非可換空間へ拡張する研究を行い,さまざまな既知の可積分系の非可換空間上への拡張や非可換空間でのWard予想を提唱した。今年度は,非可換Burgers階層,非可換KdV階層及び非可換KP階層に超対称性を課した場合について,その場の理論的構造,代数的性質や幾何学的性質について考察を進めた。超対称性が課された非可換可積分方程式階層がもつ性質の全てを洗いだせたわけではないが,行列型Lax対に対するLax-pair Generating Technique構築のために有益な考察を行うことができた。(これら未解決な問題はこれからの研究課題である。) 2.円筒KdV方程式やErnst方程式などは非圧縮・粘性流体,弾性体の力学,プラズマ現象や場の理論の数学モデルである。これらは係数が独立変数に依存する(非自励な)非線形偏微分方程式である。既知である非自励な非線形偏微分方程式は,その多くは可積分性など期待できなかった。(高次元の場合の研究を見うけることは出来ない。)本年度はパンルベ判定法及びLax-pair Generating Techniqueを用いることで,複数個の理工学の様々な分野に応用できる可能性のある(未知であった)非自励な高次元非線形偏微分方程式を構成することに成功した。加えて,それらの厳密解の詳細な性質を調べることで背後にある数理構造の解明を行った。しかし,代数的性質や幾何学的性質などの一般的な数理構造の解明には至らなかった。(これからの研究課題としたい。)
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