研究課題
若手研究(B)
研究計画最終年度の今年度においては、衝突蒸気雲の様々な力学進化段階における化学反応を総合的に評価し、最終的にどのような化学種が生成するのかを推定することを中心に研究を進めた。具体的には、天体衝突による衝突蒸気雲の生成過程(初期温度圧力の決定)、蒸気雲内での水と金属の化学反応過程、金属元素の凝縮過程、金属微粒子の上での二酸化炭素と水素の反応過程(フィッシャー=トロプッシュ反応)、蒸気雲の浮力による上昇過程の5つの過程について考察を行った。評価の結果、隕鉄質の天体が原始地球上の海あるいは氷河に高速衝突した場合には、水と金属鉄の化学反応により大量の水素ガスが生成すること、その際鉄原子のほとんどは酸化されてFeOとして凝縮すること、ニッケルはほとんど酸化されずに金属のまま凝縮すること、凝縮温度はFeOの方が高く、FeOの核の周りにニッケルの薄い層が出来る可能性が高いこと、蒸気雲の浮力による上昇速度は十分遅くニッケルの表面で大気中の二酸化炭素と蒸気雲中の水素が触媒反応して大量のメタンが生成される可能性が高いことなどが判明した。この結果は、天体衝突によって生命誕生期の地球にメタンが大量に供給される可能性が高いことを示唆している。また、同様の現象は、隕石重撃期の火星についても起きる可能性は高い。もしこの現象が起きれば、メタンの強力な温室効果により、火星の温暖湿潤気候を一時的に作り出すことができたはずである。これは、火星の古気候を考える上で非常に重要な地質学的プロセスである。
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Icarus 168
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Advances in Space Research 34
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Proceedings of 37th ISAS Lunar Planetary Symposium 37(印刷中)