研究概要 |
地殻内マグマ溜りにおける固液共存状態にあるマグマ溜りの二重拡散対流過程の解明を行うため,液相のみにおける二重拡散対流における混合の実験を行った.液中の組成の垂直プロファイルを精度良く測定することが必要となるため,本年度新たに,電気伝導度を利用して連続的に精度良く組成プロファイルを測定できる装置を新たに開発した.実験では,前年度開発した装置により,水槽中に塩水を入れ,下面より,対流プリュームの径および間隔を制御して上部塩水より低密度液を注入すし,これにより起こる組成対流により,液の混合効率を測定する.重要な結果は,以下の通りである.(1)プリューム間隔がある値以下の場合,その他の条件が混合効率に影響を与えない.(2)プリューム間隔がある値以上の場合,混合効率と注入流量の関係は単調な関数になるのではなく,注入流量の増大とともに,混合効率は減少した後増加する(すなわち最小値が存在する)という現象がみられ,これまでの結果と比較して,定性的にも異なる傾向が新しく明らかになった.(3)プリューム径は混合効率に対して,あまり大きな影響を与えない.さらに,下面からの結晶化が起こる場合の,マッシュ形成を含めた液の分化を考察し,天然のマグマ溜りのモデルへと発展させるため,マッシュや液の平均的な運動量,組成,熱などの保存則に基づく物理モデルを構築した.現段階では,定性的な時間的進化を再現するとはいうものの,実験結果を定量的に説明するものにはなっていないため,今後の検討が必要である.
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