研究概要 |
一般化された2次元乱流系として知られているα乱流のエンストロフィー慣性領域に関する理論的・数値実験的研究を行った.α乱流系のエンストロフィー慣性領域のエンストロフィースペクトルの傾きは,2次元乱流の古典的理論を適用すると,αの値に依存することが導かれる.しかしながら数値実験によると,α>2の場合にはエンストロフィースペクトルの傾きはαの値に依存せず,一定値-1となることが知られている.このようなスペクトルの冪の転移は,波数空間内の相互作用の局所・非局所性によるものと指摘されていた,しかしながら,α<2とα>2でのスペクトルの冪を統一的に導出する理論は今まで提出されていなかった. 本研究では2次元乱流のエンストロフィー慣性領域のエンストロフィースペクトルの冪の値を導く古典理論(Kraichanan-Leith-Batchelor)に波数空間内の非局所相互作用の効果を導入し,α<2とα>2を含むエンストロフィースペクトルの冪を統一的に導出する理論を提出した.実際にエンストロフィースペクトルQ(k)の冪の値は,α<2の場合には-(7-2α)/3になり,α>2の時にはαの値に依存せず-1となる.さらにα=2の場合には,Kraichnan(1971)やBowman(1996)によって議論されたようにスペクトルの冪に対数補正が存在することが導かれる.実際に,数値実験を行い理論の正当性を詳細に検討した.その結果,α=1,2,3の場合のエンストロフィースペクトルは理論的予測と極めてよく一致していた.
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