研究概要 |
吹き出し型大気圧グロープラズマ装置を用いた固体表面上の有機汚染物酸化除去処理に関して、これまで数年間に渡り研究を行ってきた結果、放電電力や試料ガス流量などの放電パラメーターと除去処理速度との関係が明らかとしてきた。一方、放電場および放電場下流域での化学種の種類とその密度の時間変化に関しては未だ不明な点が多く、本研究ではそれらの点を明らかにすることを目的に、主に分光学的手法を用いて測定を行った。 まず、2光子吸収レーザー誘起蛍光分光法を用い、大気圧プラズマ中の酸素原子の検出を試みたが、検出には至らなかった。これは、同じ装置を用いて低圧酸素プラズマ中の酸素原子の検出を行った結果より、レーザーの強度不足であることが明らかとなった。この測定については、レーザーの変更および検出器の感度の向上を行い、再度行う予定である。 大気圧グロープラズマ発生において、放電場が広い空間に均一に発生する理由として、励起状態の気体分子が常に存在し続けているからであると考えられている。大気圧ヘリウムプラズマにおいては、その活性種として準安定励起状態のヘリウム(He^m(^1S,^3S))がその役割を担っていると推測されている。そこで、まずは原子共鳴吸収分光法を用いて放電場に存在するHe^mの相対密度変化を測定した。その結果、RF電源で発生させた放電場においては、He^mの生成は放電電力に対して直線的に増加し、気体の放電場における滞留時間に対して、約20msで飽和に達することが明らかとなった。また、非常に粗い計算であるが、絶対密度に換算すると数ppm程度であることが分かった。さらに、滞留時間と生成量との関係より、He^mが主に電子との衝突によって消失(別の励起状態へ遷移)していること、数十ppb程度の不純物(O_2,N_2,H_2Oなど)でもHe^mを大きく減少させることが示唆された。今後は、レーザー誘起蛍光法でHe^mの密度測定を行う予定である。
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