研究概要 |
本研究では,昨年度立ち上げたコヒーレント・アンチストークス・ラマン散乱(Coherent Anti-Stokes Raman Scattering ; CARS)顕微鏡を用い,以下の対象をはじめ様々な系を研究した. (1)ポルフィリンJ会合体:非水溶性ポルフィリンは液液界面で自己組織化し,フレンケル励起子に由来する非常に特異な光学応答特性を示す.この機構を解明するため,ポルフィリンJ会合体微結晶のコヒーレント・ラマンイメージと蛍光イメージの同時測定を行った.励起子吸収がレーザー波長及びCARS波長とほぼ共鳴しているため,非常に強いCARS信号を得ることができた.両者のイメージを比較することから,微結晶内に励起子遷移の不均一性が存在することがわかった.空間情報とスペクトル情報を総合的に考察することにより,会合体内の励起子の非局在化のサイズは,微結晶内で約20%の分布を持つことがわかった. (2)単一生細胞:自発ラマン散乱と比べ非常に強いCARS信号を用いることで,生体を振動コントラストのみで高速に可視化することが可能である.本研究では,CH伸縮振動に焦点を絞って,分裂酵母のin vivo CARSイメージングを行った.これにより,ミトコンドリアや隔壁など,CH伸縮振動由来の信号を強く出すと考えられるオルガネラが明瞭に可視化された.本装置ではスペクトル情報を得ることができるため,副産物として二光子蛍光イメージを得ることも可能であることが示された. CARS顕微鏡による研究成果の他に,同一の光学系を応用することでハイパーラマン顕微鏡を開発することにも成功した.光学遷移の選択則より,すべての赤外活性モードはハイパーラマン活性となる.□カロテン微結晶を試料として用い,ハイパーラマンスペクトル及びハイパーラマンイメージを得ることに成功し,本手法が赤外活性モードについて超解像特性を持つことが示された.
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