研究概要 |
1.断熱型熱量計の作製:前年度から作製に取り組んだ断熱型熱量計および自動計測システムを完成させた.試料容器の熱容量測定の結果,精度は0.1%であった.今後,断熱シールドおよび自動計測システムの改良により,さらなる精度の向上をめざしたい. 2.熱容量測定:作製した断熱型熱量計を用いて,水を毛管凝縮させたMCM-41(細孔直径3.7nm)の熱容量測定を100-300Kの温度範囲で行った.その結果,236K付近に水の融解ピークを観測した.融解ピークの幅は4K程度であり,DSC測定(昇温速度5℃/min)でのピーク幅7Kに比べると小さくなった.融解ピークの幅は,DSC測定では装置および測定条件に依存して真の値より大きくなるが,今回の断熱型熱量計を用いた測定では真の値が決定できていると思われる.この試料では,後述の誘電率測定の結果,140K付近でMCM-41メソ孔表面近傍の不凍水のガラス転移が観測されることが期待されたが,その付近には明確な熱異常は観察されなかった.今後,様々な細孔径のMCM-41を用いて融解ピーク幅の細孔径依存性等を調べ,研究を進展させたい. 3.誘電率測定:水を表面吸着および毛管凝縮させたMCM-41(細孔直径3.7nm)の誘電率測定を100-300Kの温度範囲で行った.その結果,表面吸着試料の水は低温でも結晶化しない不凍水であるが,バルクの非晶質氷より水分子の運動性が高いことがわかった.また,毛管凝縮試料中の水は235K付近で結晶化するが,全体の25%の水は結晶化しないことがわかった.
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