研究課題/領域番号 |
15750024
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研究種目 |
若手研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
物理化学
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
FEDOROV Dmitri (FEDOROV Dmitri G.) 独立行政法人産業技術総合研究所, 計算科学研究部門, 研究員 (60357879)
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研究期間 (年度) |
2003 – 2004
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研究課題ステータス |
完了 (2004年度)
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配分額 *注記 |
3,700千円 (直接経費: 3,700千円)
2004年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2003年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
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キーワード | FMO / GAMESS / 並列化 / DDI / GDDI / MP2 / MCSCF |
研究概要 |
蛋白質や他の巨大分子の為の有望な理論として、フラグメント分子軌道(FMO)法がある。本研究では、従来計算法より高信頼性と高速性を兼ね備えた方法を開発し、下記の成果を得た。 (1)FMO-Moller-Plesset二次摂動論(MP2)の開発:低分子と異なり、巨大分子である蛋白質には、多数の分子内非結合相互作用があり、これを精度よく扱うために電子相関を考慮することが極めて重要である。このための最も簡便な方法としてMP2論が存在するが、分子の規模が大きくなるにつれ計算量が急激に膨大になる為、適用は数十原子程度までに限られている。本研究では、巨大分子に適用可能なMP2を二体展開FMO法と組み合わせた方法を開発した(FMO2-MP2法)。標準第一原理MP2と比較して、誤差は数kcal/molで、蛋白質に適用できる十分な精度があることを確認した。計算量の分子規模依存性はほぼ線形であることから、巨大分子の為の有力な計算法となる。 (2)FMO-MCSCF法の開発:従来のFMO法は全て一配置波動関数に基づいていたが、化学反応の遷移状態や遷移金属及び開殻系は多配置性が強く、これを考慮する必要がある。最低レベルの計算法として、多参照自己無撞着場(MCSCF)法がある。MCSCFをFMO法に導入し、二体展開までのFMO2-MCSCFを提案した。第一原理のMCSCFと比較して、最大0.5kcal/molの誤差で非常に高精度であることを実証した。また、第一原理MCSCFの絶望的に激しい規模依存性に対し、FMO2-MCCSCFの規模依存性は線形であることを示した。一方、巨大分子にはエネルギーが近い軌道が密集している為、標準多参照理論では初期軌道作成と収束についての厳しい問題がある。分子の一部のみを計算するFMO2-MCSCFではそれらの問題が軽減され、実用性が高まる。実際に、FMO2-MCSCFを用いて、初めてFMO法による励起状態の計算を行い、一重項と三重項のエネルギー差を調べた。 (3)多階層FMO法の開発:従来の計算法を更に高速化するため、分子系の重要な部分のみに高精度な計算法を用い、残りを高速に扱う多階層FMO法を開発した。この計算法をDiels-Alder反応に適用し、初めて化学反応系に関してFMO法の精度を確かめた。波動関数として、RHF又はDFT及びMP2を混在させた計算で、第一原理と比べ数kcal/molの誤差で反応熱と活性化障壁を再現することを確認した。 (4)産総研超並列計算機にFMO法のプログラムを載せ、超並列環境で高効率で使用できると確かめた。計算の負荷をさらに平準化するために、半動的方法を提案し、FMO法のプログラムに実装した。全新開発の方法をGAMESSに組み込み、平成17年6月に無償公開する予定である。
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