研究概要 |
気体分子SO_2を可逆的に吸脱着することにより,(ISO_2^-)_∞のナノワイヤ講造を生成、消滅する白金(II),パラジウム(II)錯体の類似錯体である,ニッケル(II)錯体,[NiI(dmpe)_2]Iを合成し,SO_2吸着前後の結晶構造を単結晶X線構造解析により明らかにした。SO_2分子吸着前の[NiI(dmpe)_2]Iの配位構造は五配位正方錘型構造でdmpeの4つのリン原子と1つのヨウ化物イオンが配位していた。このことから結晶内で化学的環境の異なる2つのヨウ化物イオンが存在することがわかる。これは以前単離された白金(II),パラジウム(II)錯体と異なる特徴であり,以下に記すようにSO_2分子の吸着挙動に差異を与える原因となるものである。 上記錯体にSO_2分子を作用させ,単離した化合物,[NiI(dmpe)_2](ISO_2)の結晶構造の決定に成功した。結晶の空間群,P2_12_12_1は同様の白金(II),パラジウム(II)錯体結晶におけるそれとは異なるものであった。結晶中のSO_2分子はカウンターアニオンのヨウ化物イオンと複合体を形成していたが,ニッケル(II)に配位したヨウ化物イオンとは結合していなかった。このことは配位したヨウ化物イオンには,SO_2分子と相互作用が行える,充分な空間が確保されていないことに帰結する。また上述の空間群の変化から示唆されるように,この結晶中では(ISO_2^-)_∞の一次元ワイヤ構造は形成されていなかろた。このことは金属イオンの配位環境の変化が,結晶構造全体の差異を生み,分子ワイヤ構造の形成に重要な影響を与えることを示すものである。 本結果から、金属イオンの特性による配位構造の変化が,一次元ワイヤ構造の可逆的な生成・消滅に大きな影響を与えることが,上記研究により明らがとなった。
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