研究概要 |
本研究では,生細胞の形質膜中に存在する受容体蛋白質を用い,同受容体の神経伝達物質の結合に伴う構造変化を検出する方法を開発すると共に,それを利用した新規細胞型センサーの開発を行った. 1.受容体蛋白質として神経伝達物質のアドレナリンに対する受容体(β_2AR)を用いた.C末ループの71残基を欠損させたβ_2ARのC末端にCFP,そして第三細胞内ループ内に重ヒ素化蛍光色素FlAsHが結合するCCPGCC配列を導入した遺伝子を作成した(β_2AR229C:FP,β_2AR238CFP,β_2AR250CFP).各遺伝子をHEK293細胞に発現させた後,FlAsHで標識したところ,β_2AR250CFPにおいてCFP-FlAsH間のFRET効率が最大の値を示した.さらに,β_2AR250CFPでは,アドレナリンを添加するとFRET効率が減少し,続いて,阻害剤のICI 118,551を添加するとFRET効率の減少がおさまり,神経伝達物質に応答性を示すことが分かった.以上より,細胞型センサーの開発に成功した(投稿中). 2.基板上の任意の位置に細胞を配置する技術の開発を行った.この目的のために,光分解性保護基を有する単分子膜で修飾したガラス基板を用いた.この基板に細胞接着を抑制するウシ血清アルブミンをコートした後に,光照射すると,アルブミンが表面より解離することを見出した.続いて,細胞接着を促進するフィブロネクチンを添加すると,フィブロネクチンが光照射領域に選択的に吸着し,細胞接着面が形成されること分かった.この方法を用い,一細胞を基板上の任意の位置に配置することに成功した(JACS). 1,2に基づき,様々な神経伝達物質に対する細胞型センサーを集積化することで,極微少量の神経伝達物質をリアルタイムで網羅解析することが可能になると期待される.
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