研究概要 |
パラジウム触媒を用い,テルロニウム塩とオレフィンとのMizoroki-Heck型反応が、反応温度50℃で、酢酸銀を添加することにより進行することを明らかにした。また、反応機構を明らかにするために,反応後の固体の残渣を粉末X線結晶回折により分析したところ,残渣にはヨウ化銀と0価の銀が含まれていることがわかり,酢酸銀は反応後ヨウ化銀と0価の銀に変化していることがわかった。以上の結果から,酢酸銀は生成する0価パラジウムを2価パラジウムに再生するための酸化剤としての役割とテルロニウム塩の対アニオンを交換する役割をしていると考えられる。 テルロニウム塩の代わりにスルホニウム塩を用いて,Mizoroki-Heck型反応を検討したところ、反応温度を150℃にして反応を行ったが、収率は5%程度で、反応はほとんど進行しなかった。一方、セレノニウム塩を用いて反応を行ったところ、反応温度150℃と高温にすることにより,収率は40%と低いながらもMizoroki-Heck型反応が進行することがわかった。またセレノニウム塩の場合、2座配位子を有するパラジウム触媒を用いた時に収率の向上がみられた。このように、カルコゲノニウム塩のMizoroki-Heck型反応では、高周期のカルコゲン原子からなるカルコゲノニウム塩を用いた方が穏和な条件下、効率よく反応が進行することを明らかにした。 種々の対アニオンを有する光学活性エチルメチルフェニルテルロニウム塩を用いて,ジヒドロフランとの不斉Mizoroki-Heck型反応を検討した。その結果,7%ee,8%eeと不斉収率は低いながらも不斉反応が進行することがわかった。 一方、同条件下、オレフィンを用いずに反応を行ったところ、テルロニウム塩を用いた場合、テルル上のアリール基がホモカップリングした生成物が確認できた。条件検討の結果、テルロニウム塩のホモカップリング反応には、酢酸銀が2当量必要なことがわかった。これに対し、スルホニウム塩やセレノニウム塩を用いた場合、ホモカップリング反応は全く進行しなかった。
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