研究概要 |
今年度は、主に、フェムト秒光カー効果分光装置の作製を行った。補助金は、主として、分光装置の部品(波長板、レンズ、ホルダーなど)の購入に充てた。作製した分光装置の装置応答関数(sech^2関数)は、約18フェムト秒であった。この分光装置の信号が確かに光カー効果によって得られる信号であるかどうかを確認し、また、十分なS/Nを得るために、非線形信号が既知であり信号強度の大きいベンゼン溶液の測定を行い、非線形信号の確認、十分なS/N(〜10^<-4>)の到達するよう装置を改善した。 分光装置の作製が完了したので、ポリアクリルアミド水溶液のフェムト秒ダイナミクスの測定実験を行った。特に、本年度は、超高速ダイナミクスにおける分子量の依存性を観測するため、二種類の分子量を持つポリアクリルアミド(1500および10000)と単量体モデルとしてアセトアミド、二量体と三量体モデルであるグルタルアミド、1,3,5-ペンタントリアミドの水溶液の測定を行った(グルタルアミド、1,3,5-ペンタントリアミドは合成した)。測定の結果、二種類の分子量を持つポリアクリルアミドの水溶液については、それらのフェムト秒ダイナミクスに違いが見られなかった。しかし、単量体、二量体、三量体モデルの水溶液のフェムト秒ダイナミクスとは、異なることが明らかになった。また、ポリアクリル酸の水溶液についでも、同様の結果を示した。 一方で、ポリアクリルアミドとポリアクリル酸は、常温水溶液中で分子間水素結合を介してヘテロなポリマーコンプレックスを作ることが知られているが、この系の協奏的水素結合に注目し、単量体、二量体、三量体モデルのカルボン酸とアミドの混合水溶液についても、フェムト秒分光測定実験を行った。
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