研究概要 |
本研究では生理活性を有したRNA分子の機能発現のメカニズムを、化学的観点から解析した。研究対象として、ハンマーヘッド型リボザイム(Hammerhead ribozymes:塩基配列特異的な切断反応を触媒するRNA酵素分子)の金属イオン結合モチーフの解析を行った。前年度までの研究では、RNA核酸塩基部に金属イオンが結合した場合の、^<15>N NMRスペクトル挙動(化学シフト値変異および金属-窒素間のJ-coupling)について研究し、金属イオン配位部位(窒素核)の化学シフト値変異幅を指標として配位結合とその他の結合が区別できることを提示し,論文発表を行った(J.Am.Chem.Soc.,2004,126,744.)。 2004年になって他のグループが、本研究課題の成果(窒素核の化学シフト値変異幅による化学結合識別)を裏付ける内容の論文をJ.Am.Chem.Soc.誌に発表した(分子軌道計算、^<15>N NMRによる追試、各1報)。いずれの論文も、本研究課題の結果に触発された論文であり、本研究の成果論文(J.Am.Chem.Soc.,2004,126,744.)を、鍵となる論文として引用している。これらのデータと本研究成果を併せると、窒素核(核酸塩基)の化学シフト値変異幅による化学結合識別のための基準を確立することができた。またESI-マススペクトルによる核酸塩基と金属イオンの錯体形成の確認も行い、溶液中で核酸塩基と金属イオンが配位結合を形成しうることが示された。以上の結果はChem.Commun.誌にまとめられている。また本研究に関連して、Nucleic Acids Symp.Ser.および「核酸合成法とその応用(生物工学ハンドブック)」を執筆する機会を得た。
|