研究概要 |
近年,ビジネスのグローバル化などにより,国際間通信回線等の長距離大容量通信システムの需要が拡大している.これに伴い,近い将来には現在のおよそ10倍である100Gビット/秒を超える通信システムが必要となる見込みであり,それに使用される通信用半導体レーザの性能向上が必須となっている.そのため,この半導体レーザの射出窓に使用されるサファイア単結晶(以降,Al_2O_3)の消光比異常低減が求められている. 上記の背景のもとに,本年度に行った研究で得られた新たな知見等の成果を,以下に記述する.以下の項目番号は交付申請書の「研究目的・研究実施計画」に対応している. 1.半導体レーザパッケージ(以降,PKG)に組み付けられる前のAl_2O_3の消光比異常は,光源波長の0.174%以下であった.また,ARコーティング(Anti Reflect Coating)および,ろう接の前処理であるメタライジングは消光比異常とは無関係であった. 2.PKGに組み付けられたAl_2O_3の消光比異常は0.348%以下であった. 3.以上より,Al_2O_3をPKGへ組み付ける工程に,消光比異常発生の支配的要因がある,ということが実験的に明らかとなった. 4.Al_2O_3は,半導体レーザの光軸に対して8°傾けてPKGに組み付けられる.これは,反射光(一般に「戻り光」という)が半導体レーザ素子を直撃して,レーザ素子のフィードバック機構を阻害することを防止するためである.よって,8°傾けた際にAl_2O_3の偏光度が最小になる加工を行った.このAl_2O_3の面内偏光度と消光比異常を測定したところ,いずれの値も光源波長の0.174%以下となった. 偏光度がゼロであれば,半導体レーザの偏光状態は,Al_2O_3透過後も全く変化しないため,結果的に半導体レーザの偏光の品質を高めることになる. 5.本研究により2件の特許を出願した.
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