研究概要 |
【1】微小材料・薄膜の機械的特性は結晶の配向性によって値は変化するが,同じ配向の場合,結晶粒形状,境界条件の違いによる弾性特性の変化はないことが明らかになった.しかしながら基板を付けた場合,膜厚により弾性特性が変化する事も明らかになった.したがって,立方晶多結晶体の材料特性は,異方性パラメータと単結晶の特性に支配される事が分かった.またランダム配向の場合,面内等方性を与える粒子数があれば,高さ方向に一結晶粒しかなくてもバルクな特性を与える事が分かった. 【2】昨年度作成した多結晶体におけるき裂発生,連結,進展シミュレーションを用いて,無欠陥材(均一結晶モデルと不均一結晶モデル),き裂材,欠陥材,空孔材を用いてき裂進展シミュレーションの弾性解析を行い,微視特性が機械的特性に及ぼす影響ついて検討し,要求項目に伴う材料設計指針を明示した. 【3】マイクロクラックの発生に伴う非線形性はあまり現われず,ロッキング,ブリッジングを考慮しない状態では,靭性向上が望めない事が分かった.また,粒界強度のばらつきはさほど最大強度には影響を及ぼさず,き裂発生応力のばらつきに対応した. 【4】結晶粒形状の違いは弾性特性,最大強度にはさほど影響を及ぼさず,き裂発生応力,き裂発生数に大きく影響を与える.したがって,き裂発生が致命的な破壊に繋がる部分へ適用する材料は均一形状の材料組織が良く,多くの欠陥を含む材料やき裂発生が伴う箇所への適用は不均一結晶粒組織を有する材料が有効である事が分かった.また,結晶粒一個程度の欠陥の場合は致命的な材料強度の低下に繋がらない事もが分かった。 【5】ハイドロキシアパタイト緻密体と多孔体の曲げ試験を行った.脆性的破断の緻密体に対し,多孔体の破面形態は同じであった.またX線CTによる多孔体の内部構造の同定を行った.さらに気孔率の異なるアルミナ多孔体の圧縮試験で,顕微ラマン分光法による応力伝達状態解明の可能性を示した.
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