研究概要 |
平成16年度においては,平成15年度に構築した油膜厚さ計測システムを用い,非定常下における弾性流体潤滑油膜厚さの計測を行った.実験は,ボールオンディスク型の実験装置を用いて,ボールとディスクとの接触により潤滑状態を作り出し,両面の回転速度を独立に制御することにより滑り,転がり駆動を任意に設定した.そして,非定常条件の影響が顕著に現れやすい停止状態からの滑り出し状態で実験を行い,定常状態での油膜厚さとの比較を行った.その結果,純転がり時のような両面が駆動している状態では非定常性の影響は現れにくいが,片面が固定されている滑り出し時においては,わずかな加速度であっても加減速時における油膜挙動は,定常状態のものと厚さ,分布ともに大きく異なることが明らかとなった.このような非定常的な問題の起こる条件は,当初推定していた条件よりも高速な条件であり,現存の温度分布計測システムでは温度分布の非定常挙動を議論できるまでの計測はできなかったため,非定常熱流体潤滑解析を行って表面及び油膜内での温度分布の非定常性を理論的に推定した.その結果,油膜内での温度分布の非定常性の影響は極めて小さいことがわかったが,静止表面に流入した熱拡散の非定常性が最も顕著に油膜形成能力に大きな影響を及ぼすことが明らかとなった.以上のように,本研究では,非定常条件における油膜厚さの挙動及びそのメカニズムを調べた結果,潤滑面の熱的非定常性が油膜挙動に大きな影響を及ぼすことを明らかにし,潤滑面の非定常温度計測の必要性を具体的に示すことができた.
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