研究概要 |
前年度に引き続き,樹木の抗力測定を行った.その結果,同一種かつほぼ同寸法の樹木においても,抗力係数が,個体によって異なることがわかった.その理由の一つとしては,幹のしなり具合が個体によって異なるためと考え,幹のしなり具合を,樹木が風を受けている際の正味の投影面積から求めた「しなり度」として定量的に評価することを試みた.その結果,幹のしなり具合と抗力の変化には,反比例の関係があることを明らかにした.さらに,いまひとつ抗力に影響を及ぼす因子として,枝葉の透過性に注目した.樹木の外形を変えずに剪定を施し,枝葉の密度を変えた樹木の抗力測定を行い,その影響を明らかにした. 樹木の後流構造については,乱れ強さ最大位置で同時測定された速度変動に対して相互相関解析を行った結果,樹木の後流にも円柱の後流と同様なカルマン渦列が存在すること,また,その無次元放出周波数(ストローハル数)は,円柱のそれとほぼ同一であることを確かめた. また、防風林を想定し樹木を複数本並べた際の抗力と後流特性については,流れが前列の樹木間を通過する際に増速されることにより,後列の樹木が受ける抗力がより増加することがある可能性を示した.このことに関連して,自然林においても,直接風を受ける外側の樹木よりも,内側の樹木が倒れているという報告があることがわかった. また本年度は,台風の上陸が多かった故,全国各地から倒木による災害・二次被害の報告があった.とくに勢力の大きかった台風18号による北海道の被害では,多くの倒木が発生した.北海道大学のポプラ並木の倒壊を例にとり,本研究で得られた抗力データベースにより,倒壊時に樹木にかかった抗力の概算を試みたところ,9000kgfもの荷重がかかっていた可能性があることがわかった.
|