研究概要 |
前年度までの成果を踏まえ,本年度は,主に次のテーマに取り組んだ. 1.蒸気・蒸気2成分系で新たに発見した新気体論効果の研究を引き続き展開した.本研究ではすでに,蒸発・凝縮を伴う2平板間において,新気体論効果の概念により初めて理解可能な移流・拡散型の解が,オイラー型の2つの解の分枝を接続していることを見出し,これを立証するための漸近解析を行うとともに数値的にもこの理論の妥当性を示している.前年度までの成果はモデル方程式に基くものであったが,本来のボルツマン方程式の場合にこれらの成果を一般化することに成功した.この成果は論文にまとめ,Eur.J.Mech.B/Fluidsへ投稿中である. 2.蒸気・蒸気2成分系で新たに見つかった新気体論効果では,いわゆる通常の気体論効果である壁面での物理量の「跳び」が本質的である.そこで,古典的ではあるが新たな重要性を担うにいたった,新気体論効果を定量的に完成するために最後に残っていた温度や成分濃度勾配に起因する凝縮相界面でのとびの問題を線形ボルツマン方程式に基づいて解析し,混合気体に対するボルツマン方程式の標準解となるべき精確な解を求めた.この成果はすでにPhysics of Fluids誌に掲載が決まっている. 3.前年度までに引き続き,重力場内でおこると予想される,2成分混合気体系の成層状態の不安定化について計算を進めている.前年度までに比べて,不安定化により対流渦が発生するパラメータ領域の確定作業を大幅に進めることができた.この成果の第一報を平成18年度7月に開催予定の希薄気体力学国際会議において発表する予定である.
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