研究概要 |
近年、ナノ・マイクロテクノロジーの発展に伴い,特定の波長の光を吸収する半導体粒子などの機能性微粒子の研究が盛んに行われており,溶媒中における微粒子挙動の解明が求められている.しかしながら低Reynolds数条件における粒子間の流体力学的相互作用は長距離性を有すること,また近接極限において連続体近似が破綻することなど複雑な因子を多く含むため,溶媒中における微粒子の分散・凝集のダイナミクスはほとんど明らかにされていない.本研究では,このような粘性流体中における固体粒子のダイナミクスに関連する研究として,粒子の自由運動にともなう位置および加速度変化を同時測定し,さまざまな条件における固体間の流体力学的相互作用の詳細を調べた.3種類の液中粒子の加速度計測用センサ粒子(以下,センサ粒子)を製作した.ピエゾ抵抗型微小加速度センサ,信号増幅部および電源部からなる小型回路をアクリル製中空粒子に内蔵し,データ取得のために,テレメトリ回路による無線送信,内蔵マイクロロガーによるデータ蓄積,微細エナメル線による有線通信の3手法を用いた回路を製作した.また外部からLED変位計,レーザ変位計を併用した粒子変位の非接触測定を行った.外部からの粒子変位測定により,低Reynolds数条件における粒子-固体壁面の接近時の粒子挙動が明らかとなった.固体壁面への接近時に潤滑効果による過大な流体力が作用し,壁面近傍で急激な減速運動を行う粒子の加速-減速過程は,低Reynolds数条件の定常流体力および非定常流体力の線形和により得られる粒子軌跡と定量的に一致した.またセンサ粒子による加速度測定により,定性的な流体力変化の傾向が得られた.本実験結果から,流体中の固体衝突に伴う流体力学的効果の詳細が明らかとなった.
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