研究概要 |
平成16年度は,レーザエネルギ供給をコントロールすることで,薄板ガラス表面に微細な突起を形成し得るという平成15年度の結果を受け,そのメカニズム解明に資することを目的として,被加工材料の表面における微細形状変化を,高速度カメラにより詳細観察した.その結果,被加工材料の表面変形の開始は,レーザ照射開始から遅延時間を有すること,また,表面の変形量は時間発達し,レーザ照射停止後も継続する結果を得た.また,過剰なエネルギ投入を行った際には,材料表面より発光を伴いながらアブレーションが発生する様子を観察した.これより,微細突起の生成機構は基本的にふく射エネルギ投入により発生する熱が現象を支配しており,それ故に加熱状況および熱移動状態をコントロールすることで材料表面の微細な形状を制御し得る基本的な指針を得た.そこで,加熱状況を外的にコントロールする手立てとして,レーザ強度を制御するのではなく,被加工材料自体のふく射吸収特性を変化させることを検討した.すなわち,被加工材料のふく射吸収係数を能動的に制御するために,材料内にフォトクロミックダイを添加し,外部からの励起光により材料のふく射吸収係数が変化する手法を考案し,その基礎的知見の蓄積を行った.その結果,検討手法の効果を発揮するためには,励起光強度が被加工材料中において減衰するために生じる材料内の局所的な吸収係数分布,ダイの熱退色ならびに光退色に対する考慮が必要であることを示した.これらの知見に基づいた応用事例として,透明高分子材料の新規レーザ接合手法を提案するとともに,その概念について特許申請を行った.
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